公開セミネール 2020/2023 記録「セミネール断章」
意識・夢・幻覚のホログラフィック理論
Holographic Theory of Consciousness, Dreams and Hallucinations
オールフラットから多次元宇宙へ

2023年11月講義
講義:藤田博史(精神分析医)


セミネール断章 2023年11月12日講義より

第11講:数理科学による精神分析の解体

 
 この量子もつれが起こると不思議なことが起こる。つまりクライエントとわたしとの間に一定の連絡関係が生じるのです。そうすると、以前からお話ししているように、目の前のクライエントを治癒させるのではなく、わたしが創り出しているホログラムとしてのクライエントを治癒させれば良いことになる。そのために精神分析の技法が必要になる。

 そこで必要なのは、治療者の自己分析が徹底されていることです。目の前にいるクライエントを治癒に向かわせるためには、自らが創り出しているホログラムとしてのクライエントの問題点を、自己分析によって解決することで、量子もつれにより、クライエントの問題点も同時に解決する。そういう考え方です。

 実際に治るんです。狭山メンタルクリニックの口コミに「治った」と書いておられる方は、短期間で治癒された方のなかのほんの一部です。治った方は口コミを書く必要もないのですが、それでも感激して書いてくれる方が少なからずおられます。たとえば、中学校の頃から、女性の方で、過敏性腸症候群で、電車にも長い間乗っていられない、長い間苦しんできた、内科のクリニックにもあちこち行った、いろんな薬を出されたが治らない、という方が来られました。その方が診察室に入って来られた瞬間に、この過敏性腸症候群そのものは、その方の脳内の大脳辺縁系と視床下部の連絡に不具合が起こっていると直観するのです。恐らく量子もつれによるのでしょう。大脳辺縁系と視床下部が連動して生じている自律神経症状であるとわかるのです。そこで大脳辺縁系のモノアミンを上昇させるクロミプラミンと心身症に有効なブロマゼパムをほんのわずかだけ処方しました。通常その量だと治す力は殆どないのですが、プラセボ(偽薬)として機能するわけです。

 重要なのは、そのときにわたしは心のなかで「この症状は消失する、治る」という確信を抱きます。「あなたの過敏性腸症候群は治りますよ」と「治る」という確信を自分のなかに生き生きと思い描きます。このように、確信を持つことが大変重要で、単なる生業として精神科医をやっている人は治せない。その程度のモチベーションでは治らないし、治せない。

 やはり自分の「天職」だとか「宿命」だとか、そういう心構えが必要です。治療者の心のなかに描かれたクライエントが治癒する姿をありありと思い描く。治って微笑んでいる姿をクリアに想像する、そして治ることは当たり前だと自分のなかに強い確信を持つことです。それでごく少量のクロミプラミンとブロマゼパムも投与して速やかに精神症状が消失する。そして薬も飲む必要もなくなる。しかも極めて短期間でこれが起こる。だからその方は「嘘のようです、先生、これだけ長い間苦しんできたことが本当に嘘のようです」と喜んでくれました。実際、この方は狭山メンタルクリニックの口コミに書いてくださっていますから皆さんも確認していただけます。

 この方に限らず、子供のautism、自閉系の子供たちもまた劇的によくなる。学校に行けなかった子が学校に行けるようになる。ただし、学校に行けるようになることが果たして良いのかわかりません。日本の学校は全体主義、集団主義に支えられていますから、本当は学校なんて行かない方が良いかもしれません。それでも、そんな学校に対して「上から目線」で「行ってやる」みたいな感じになることができる。

 おそらく従来型の精神分析ではなく、数理精神分析(mathematicai psychoanalysis)とでも呼べるような、量子論的精神分析をもう少し推し進めて行って、どの治療者もこの技法が使えるように持っていくこと。これはわたしの使命でもあるし、書籍の形で出せれば良いかなと思っています。そのために、まずはこのセミネールでお話するということなのです。

 わたし自身が驚く。こんなに早く治る予定じゃなかった、というくらい本当に早く治るのです。幼い、4歳、5歳、6歳ぐらいの3姉妹の女の子がいて、真ん中の子が重症の不安障害でした。その子も量子論的な面接をして、プラセボとしてブロマゼパム1mg錠半錠を処方したわけですが、薬の処方とはひとつのテクニックで、本人は薬のおかげで治ると思うわけです。初診の方は1週間後に来てもらうようにしているのですが、1週間後に再診したら、母親が「先生、あの子、薬を飲んで翌日に良くなっちゃいました」と仰いました。翌日ですよ、翌日。つまり、薬は1~2回しか飲んでいない。治療技法というのは、いわゆるテクニック以上のものであって、よくある精神科面接の技法の類いではないのです。

 大胆な言い方をすると「神田橋條治は古い」ということになる。もちろん、若かりし頃はとても勉強になりました。しかしながら、今読み返してみると、どうしても経験から抽出された「How Toもの」の域を出ていない。「クライエントと面接している時は、もう1人の自分を天井に置く」とか、そんな話です。しかしながら、クライエントと「治癒を前提として真に向き合う」というのはそんなことではないのです。人間と人間が向き合った時に量子もつれが生じる。その量子もつれによって、治療者が創り出したホログラムとしてのクライエントが、現在進行形の苦しみから脱却してゆく。そのためには、治療者自身が自らのコンプレックスを抱えていては上手くゆかないし、自身のなかに迷いがあっても駄目なのです。そうではなく、治療者が、治癒に関する確信をしっかり保持していることが大前提です。実際「藤田先生の顔を見るだけで治る気がします」と仰ってくださる方がかなりおられます。「何時間待ってもいいから藤田先生のカウンセリングを受けたい」と言ってくれる人がいる。本当にありがたいことです。つまり「顔見ただけでよくなる」というのはまさに量子もつれによる治癒を、クライエントがそれと気づくことなく体感しているということになります。